本を読む

たきのにっきです。

「僕はパパを殺すことに決めた」エリート少年自宅放火事件の真実 草薙厚子

「僕はパパを殺すことに決めた」草薙厚子

 

僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実』は、草薙厚子によるノンフィクション書籍。2006年に起きた奈良自宅放火母子3人殺人事件を取材し、2007年に講談社より刊行された。

僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実 - Wikipedia

 

ネタバレありの感想:

 

読んだ後に最初に思ったことは保護処分でよかった。

あまりにも少年がかわいそうだった。

 

少年(16歳)が自宅に放火をして

継母と異母弟妹を焼死と異母弟妹を焼死させてしまった事件。

この事件の文字だけ切り取られたら少年はなんてことをしたんだ、と思うのは間違いない。

 

ですが、この本を読むととてつもない悲しさを感じるとともに

ドメスティックバイオレンス家庭内暴力)について考えさせられずにはいられなくなるのです。

様々な感情が襲ってきて読んだ当日はうまく寝れなくなってしまった。

 

この本が話題になった理由の一つに

供述書の引用が使われていることがあるらしい。

 

加害者少年、父親の供述調書と医師の精神鑑定調書からの引用が多いのですが、

本当は非公開とされる少年審判の供述調書が使われている、

また医師が守秘義務を守らなかったということで漏洩で

精神科医師が有罪判定になってしまっています。

 

そのポイントだけをみると

倫理規定を守らなければいけなかったので

そのことは医師、関わったジャーナリストの方や出版の方も考えなければいけなかったはずなのは明確です。

 

でもその結果、

世にでるはずのないものを見させていただいてることになるし、

これは読了してるからこその勝手な感想文だからいえることだけれど、

この内容を読んで、マスコミが仮にその当時、継母との確執によって放火をした少年、と報道していたのであれば、異なった観方をみせてくれるこの引用を世にだしたいと思ってしまったのは仕方ないと思わせられるほどです。

 

自分の年齢や、職業、日々携わってることにより、

どの人間に共感するか、どの事項が気になるかは変わってくると思いますが

私は父親の供述書が内容が印象的でした。

 

この本を読むと、

どうみても重度の家庭内暴力なのに

父親に対しては何も処分がないこと、

そして父親にその自覚がないことが気になってしまいました。

 

淡々とした父親の供述に

自分が間違っているということを感じさせるような

雰囲気が全然ないのです。それが逆に怖いと思わせられます。

 

元嫁、被害にあった少年の継母も父親の

家庭内暴力の被害にあっていたよう。

 

少年の供述にシャープペンの芯がささったまま、や

頭を縫うほどのケガを父からおったとしたらそれは相当じゃないですか?

 

エピソードの一つ、一つ、そのときに誰かが知っていれば、

家庭内暴力として第三者が介入できたのでは。。。

と思わずにはいられない。

 

やっぱり子供はまだまだちいさい世界の中で生きている。

医者になるのがすべてじゃない、ともう少し成長したら思えていたかもしれないけれど

父親が医者でまわりも少年が医者になるだろうと期待された中で

いきるのはつらかっただろうなぁ。

 

継母も少年を本当に気にしていたのだろうなぁという

エピソード、

実の母も少年のことを思っていたのだろうというストーリーがあり、それも切なくさせる。

ただ2人ともやはり父のバイオレンスな部分を恐れて

結果的に手を差し伸べられなくなってしまった。

 

父親の供述書をみると結果的にこの犯罪が起きたために

自分のしたことを間違っていると話しているけれど

それが起きなかったら逆に一切自分の行動に非を認めなかったのでは?

と思わずにいられない。

 

父親は息子のことを気にかけていたからこそ、

自分の時間を割いて勉強に付き合った。

それは愛情からがあったはず。

 

でも家庭内暴力は愛情だったからでは許されない。

ここにいきつくまでに、止める方法はなかったのか、

父親がどういう経緯でこれは考えるべき、と過去に行動をふりかえったら

この少年が救えたのかな、と思ってしまう。

 

親であってもうまれた時点で、子供は違う人間だから

子供も自分の意志が育つはず、それなのにそれを全部無視して

親が親のエゴ、自分のために

想いを投影して子供に押し付けるのは違うよね。

 

本が一部なのはわかるけれど、

この父親への疑問を除いては

出てきた人が皆良い人で、継母も本当によくしようとしていたのだなぁと

思ってくる話が多かったのでますますつらくなりました。

 

継母側にたつと

父親と揉めたときに、実家に帰ったが少年だけ家に置いてきた。

それは少年を愛してない、気にかけていないでなくて、

父親の暴力が真実でそれまでの救いに対して起きたことも事実ならば

自己防衛のためにそうしてしまうことは考えられる。

 

けれどやっぱり少年からしたら

これだけ父親への想いがあって、自分だけ家にいたいはずがない、

しかしこの結果やっぱり継母には頼れないと

助けを求められるはずのドアが閉じてしまい

悲しかっただろうな、と感じた。

 

思うところありすぎて

あのことを考えこちらにとびあちらに飛びと散文、長文になりました。

 

読了後、いろいろな気持ちをもたらせられるのは

間違いないです。